第59回全国学校体育研究大会 学校体育研究功労者


荒井 孝祐

福島県矢吹町立矢吹中学校長

 

 

公益財団法人日本学校体育連研究連合会 全国学校体育研究功労者表彰を受賞して

 

 この度、日本学校体育研究連合会より栄えある全国学校体育功労賞を頂戴し、たいへん悦ばしく光栄に存じます。教職生活36年間にわたり、ご教導くださいました諸先輩をはじめ、多くの同僚・後輩の皆様方にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 私は昭和60年に福島県中学校の保健体育科教諭として採用されました。運動(スポーツ)に対する関心・意欲を高め、体を動かすことが好きな生徒を育て、その結果として運動能力や体力の向上が図れることを目指して必死で取り組んでまいりました。私が20代の頃はサーキットトレーニングが流行で、週に2日程度放課後に生徒も教職員も一緒になって学校全体で一斉に活動させていました。半ば強制的であったことは事実でありますが、体力向上に成果を上げたことは言うまでもありません。その後福島県内でも荒れる生徒、切れる生徒が出現し、学校全体で体力向上に取り組む指導が難しくなり、生徒の体力向上は、保健体育の授業と部活動に委ねられるようになったと記憶しています。それからは、生徒の運動(スポーツ)に向かう姿勢は二極化し、保健体育科の授業でもやる気の出ない生徒に如何に目標を持たせ、取り組ませられるかが我々保健体育科教員の大きな課題になりました。私はこの時期、教育行政に入り、二極化という課題解決のために小中学校の現場の先生方と議論して、目標の個別化やルールの工夫、評価の見直し・改善等で運動(スポーツ)嫌いな児童生徒に対して、より多くの運動量確保を目指した支援策を模索しました。A校ではうまくいってもB校では全くうまくいかないなどの繰り返しでした。力不足を痛感させられました。

 平成28年度に福島市で開催された第55回全国学校体育研究大会福島大会において、実行委員会副会長並びに運営委員会研究部部長として、研究主題「仲間とともに運動の楽しさを味わい、生涯にわたって運動・スポーツに親しむ資質や能力をはぐくむ体育授業」はどうあればよいのかという福島県が目指す学校体育の在り方を研究部長として参加させていただき、研修主題設定の理由、生徒の実態、各校種ごとの取り組み、研究内容等のとりまとめを行い、全体会において基調報告をさせていただきました。この取り組みが福島県学校体育に恩返しになり、今回の受賞につながったものと自覚しています。

 もう1年、中学校現場におりますので今回の受賞を励みに、福島県学校体育発展のために少しでも貢献できるよう努力していく所存です。

 結びに、もとより浅学非才の身ではありますが、貴重な出会いの下、諸先輩方や多くの同僚・後輩の皆様方に「体育人」として育てていただきましたことに、改めて深く感謝申し上げます。福島県学校体育研究連合会のご発展をご祈念申し上げ、お礼の辞といたします。


(推薦書)

1.研究業績

 教諭として指導にあたっていた蓬田中、白河中央中、塙中、西郷第一中では、学校の規模や地域性に違いはあっても、常に生徒の実態を捉え、課題を明確にして授業に取り組み、運動能力はもとより運動に対する関心・意欲を高め、体を動かすことが好きな生徒を育ててきた。また、陸上競技やバスケットボールの指導では高い専門性を発揮し、運動の基礎となる体の動きに加え、力の効果的な伝え方、効果的な戦術の思考法を指導し、全国大会で入賞するなど、優秀な選手を数多く輩出した。

 特に、蓬田中時代は、一人ひとりの体力の向上を図ることを目的に、校庭の地形を利用しながら創意の時間や業間体育の時間を使って「トリム活動」と称した10種類程度のサーキットトレーニングを全校生徒を一斉に活動させ、体力向上に成果を上げた。 

 また、部活動ではバスケットボール部の顧問として、指導法を常に研究し、戦術を実践化するための個の特徴を活かす練習を取り入れて県新人大会で優勝に導くなど強豪チームへと成長させた。

 学校現場を離れ、行政職として学校体育に関わった中島村、県南教育事務所での勤務は、それぞれ立場は違っても、一貫して児童生徒や学校に視点をおいて業務に取り組み、現場の教職員に寄り添った指導を行った。

 特に、県南教育事務所社会教育主事兼指導主事時代には、児童生徒の運動に取り組む姿勢の二極化が顕著になった時期であり、その課題解決のために小中学校の現場の先生方と議論して、目標の個別化やルールの工夫、評価の工夫等で運動嫌いな児童生徒に対してより多くの運動量確保を目指した支援策を模索した。全国体育実技講習会をはじめとした体育指導者研修会等に積極的に参加するなど、指導・助言に生かした。

 さらに、平成28年度に福島市で開催された第55回全国学校体育研究大会福島大会において、実行委員会副会長並びに運営委員会研究部部長として、研究主題「仲間とともに運動の楽しさを味わい、生涯にわたって運動・スポーツに親しむ資質や能力をはぐくむ体育授業」はどうあればよいのかという福島県が目指す学校体育の在り方を研究部長としてリードした。研修主題設定の理由、生徒の実態、各校種ごとの取り組み、研究内容等のとりまとめを行い、全体会において基調報告を行った。さらに、中学校各分科会の授業公開に向けて授業者に対して丁寧に指導助言をする等、後進の指導にも力を入れて取り組んだ。

 

2.学校体育研究団体における活動および役員等の略歴研究の成果

 平成20年度から3年間、東白川支部中教研保健体育部会長。平成27年度から2年間、福島支部中教研保健体育部会長並びに福島県中教研保健体育部会長。平成29年度から2年間、東西しらかわ支部中教研保健体育部会長を務め、研究会の充実を図り、保健体育科を中心に各教科の授業の質的向上に努めた。また、平成31年度より2年間、東西しらかわ中体連会長、令和2年度には県南中体連会長を務め、中学生の体力向上と競技力向上はもとより学校体育の充実とスポーツの振興に尽力した。

 さらに、平成27年度から2年間、福島県学体連副会長を務め、第55回全国学校体育研究大会福島大会の企画・運営に尽力した。

 

3.勤続年数

 36年

 

4.教職の略歴

 昭和60年 平田村立蓬田中学校教諭

 平成  2年 白河市立白河中央中学校教諭

 平成  9年 塙町立塙中学校教諭

 平成11年 県南教育事務所派遣社会教育主事(中島村派遣)

 平成14年 西郷村立西郷第一中学校教諭

 平成17年 表郷村立表郷中学校教頭

 平成20年 塙町立塙中学校教頭

 平成23年 県南教育事務所社会教育主事兼指導主事

 平成26年 川俣町立山木屋中学校校長

 平成29年 白河市立東中学校校長

 令和  2年 矢吹町立矢吹中学校校長