第57回全国学校体育研究大会 学校体育優良校


福島市立北沢又小学校

校長 本多 充

〒960-8251

福島県福島市北沢又字愛宕1

TEL:024-558-8681

FAX:024-558-4986

 

1.研究主題

 「運動の楽しさや喜びを味わい、自ら進んで実践する力を身に付ける体つくり運動の授業」

 

2.研究の期間

 平成27年度~平成30年度 4年間

 

3.研究の目的

 東日本大震災から7年が経過したが、3年前までは遊具を使っての遊びの制限が続き、他校の子供達よりも自由に遊ぶ場と体力を高める場を失っていた。このことを契機に、運動習慣の二極化傾向が際立ち、体力の低下や身体能力発達の未熟さが見られる。

 これらの問題を解決するためには、生涯体育の基盤となる運動の楽しさや喜びを十分に味わわせ、進んで運動に取り組む子供を育成することが急務である。本校の子供達の発達の状況や体力の実態を考えると、将来の体力向上につなげていくためには、さまざまな基本的な動きを培っていくことが重要であると考えた。そこで、体育科での各領域の基本的な動きを扱う「体つくり運動」領域を中心に研究していくことにした。この領域を通して、「運動したい」「やってみたい」「もっとできるようになりたい」という子供の思いを呼び覚まし、自分の課題解決に向かって主体的・協働的に学ぶ姿を引き出しながら、運動の楽しさや喜びを味わわせ、生涯にわたって運動に親しむことのできる子供を育成していきたいと考えた。

 

4.研究の実践内容

(1)6年間の系統性を踏まえた単元計画の作成

子供の実態と系統性を重視した指導計画の作成

  各学年の体力テストの結果を分析し、強化すべき体力を明確にし、どのような運動をしていけば体力を高めることができるのかを検討し、扱う教材の選定や時数の配当を工夫した指導計画を作成した。また、福島県独自で行っている「運動身体づくりプログラム」との関連も考慮し、主運動につながるプログラムの運動内容との関連も考慮し、指導計画の中に明記した。各運動の基礎・基本や系統性を考慮した単 元計画の作成

  基本的な動きの習得と動き質の高まりをめざし、低・中・高学年の系統性を考慮した単元計画を作成した。

 

(2)体力の高まりや達成感を味わえる授業の工夫

楽しさや達成感を味わえる授業の工夫

  低学年では挑戦意欲をかき立てる運動・遊びの経験、中学年では動きの広がりや操作の安定を目指した運動、高学年では自己の体力に応じた体力づくりの実践を目指し、本校の児童の実態に応じた教材作りを行った。指導に当たっては、授業者が子供達のつまずきを適切に把握し、それを解消する有効な手だてを工夫することで、どの子供にも達成感を味わえるような教材の開発・工夫を行った。

 

学び合い活動の充実

  本校における学び合い活動は、学習課題について自分が気付いたことや思ったことを友達と表現し合う中で解決の糸口を見つけたり、友達の動きや考えを自分の動きに取り入れたりすることで、運動意欲が向上し、さらには運動の質が高まることをねらいとして取り組んできた。授業の中では、児童はできるようになるための動きのこつやポイントを見つけ、それを学級全体で共有できるよう様々な方法で可視化を工夫してきた。お互いの動きを見合いながら、友達がどんな動きをしているのかを伝え合ったり、課題解決に向けて「アドバイスし合ったりすることができるようになった。これらの学びのサイクルをスパイラル的に繰り返してきたことで、より難しい動きや場に挑戦できるようになり、さらには動きの質を高めることができた。

 

(3)授業の改善や子供の支援に生かすための、適切な評価の工夫

めざす児童の姿を明確にした評価

 本時の課題と照らし合わせ、「ねらいとする児童の姿」を明確にして評価を行った。

 

子供の変容を可視化するための工夫

 児童が何を意識して運動に取り組んでいるのかをガムテープなどを使って可視化することにより、動きの伸びを把握することができた。

 

子供の変容に合わせた授業の工夫・改善

 同学年で、PDCAサイクルによる授業研究を積み重ねることにより、場や教材、指導過程、単元計画や評価規準(計画)等を見直し、より児童の実態に即した授業展開を目指してきた。

 

5.研究の成果

・各学年の発達段階を考慮した単元指導計画を作成し、子供達に興味・関心を持たせることができるような魅力的なネーミングの教材を工夫してきたことで、学習意欲が向上した。

・学び合いにおいて、動きを見合う時間の確保や見合う観点を示すことで、焦点を絞った話し合いを進めることができるようになった。

・グループやペアなどによる話し合いを通して、子供達に身に付けさせたい思考力を高めるとともに、互いの存在を確かめ合えることで学び合うよさを実感させることができた。

・振り返りの中で、自分の思いや考えを書きまとめたことを発表し合うことにより、お互いの思いを分かち合ったり、感じ方を認め合ったりしたことは、子供の動きや体力を高めるのにとても有効であった。

 

6.今後の課題

・さらに、児童が楽しみながら動きを高めていくことができる、魅力的な教材や場の設定を工夫していく必要がある。

 

・いかに必然的な「めあて」を持たせながら授業を展開していくかを探っていきたい。