第57回全国学校体育研究大会 学校体育優良校
福島市立平野小学校
校長 重巣吉美
〒960-0231
福島県福島市飯坂町平野字石堂10
TEL:024-542-2732
FAX:024-543-1164
1.研究主題
「思いや考えを伝え合い、学び合う児童の育成」
~ユニバーサルデザインの考えを取り入れた体育科の授業を通して~
2.研究の期間
平成27年度~平成30年度 4年間
3.研究の目的
福島市は、7年前の東日本大震災による原子力発電所の事故の影響により、屋外運動が制限されるなどして児童の体力低下は深刻な状況であった。また運動の二極化傾向も際立っていた。
こうした状況をいち早く改善するためも、児童には運動の楽しさや喜び、達成感を十分に味わわせ、日常的にも進んで運動に親しむ態度を養うことが急務であった。そこで、誰もが「わかる・できる」喜びを味わえるというユニバーサルデザインの考えをもとに授業を構成し、自らの課題解決に向けて、動きを見合い、仲間と教え合い、運動の方法を工夫して主体的・協働的に追究する学習を進めることで、一人一人が楽しさや達成感を味わえるのではないかと考えた。
4.研究の実践内容
「思いや考えを伝え合い、学び合う児童の育成」に向けて、次の3点を研究の視点として設定し、研究を進めてきた。
(視点1)系統性をふまえた指導計画の作成
①系統性をふまえた年間指導計画の作成
年間指導計画を作成するに当たっては、次の3点を考慮した。
・指導する運動を2つの学年に振り分けること
・学年の発達特性や育てたい児童像から重点領域を設定し、領域ごとに時数を配当すること
・季節、学校行事、施設・設備や用具の状況、他教科等の組み合わせを配慮すること
②児童の実態をふまえた研究構想の作成
・器械運動領域の研究で積み重ねてきた既習事項の技について、児童がどの程度できるのかといった実態調査の記録を引き継いで指導すること
③単元指導計画の作成
・2年間を見通して子どもに「どの段階でどんな力を身に付けるか」というビジョンをもち、2年間の単元指導計画をもとに全職員が共通理解を図って指導すること
④ひらのっ子タイム(業間体育の実施)
・週に1回の業間体育を日課表に位置づけ、指導計画のもと、年間を通して実施すること
(視点2)ユニバーサルデザインの考えを取り入れた授業の展開
①単元設定の工夫
・低学年においては、「忍者の修行シリーズ」として「鉄棒を使った運動遊び」「マットを使った運動遊び」「跳び箱を使った運動遊び」の単元を実施した。
②ひらのっ子運動
・「ひらのっ子運動」という本校オリジナルの感覚つくりに資する運動を開発し、器械運動領域の学習を行う際には、全学年において必ず授業の導入に位置づけた。実施する際は、8分程度の時間を上限とし、軽快な音楽に合わせて楽しみながら取り組めるように工夫した。
③追究意欲を高める課題の設定
・児童の課題を付箋やネームカードを貼って明示したり、学習カードに記入させたりすることによって、課題の共有化を図った。
④課題を追究し、学び合う場の設定
・できる子ができない子へ技のコツをアドバイスしたり、励ましたりして関わり合う場面が必然的に見られることを意図して、「異質グループ」編成による授業を積極的に活用した。
(視点3)個の支援に生きる評価の工夫
①学習を振り返り、評価する場の設定
・どの学年の実践においても、学習を振り返り、評価するために学習カードの活用と、その内容を工夫した。
5.研究の成果
・児童の実態を考慮し、2年間の単元指導計画を作成することで、児童の成長を見通して指導を進めることができた。
・単元構成や場の設定、学習過程モデルの工夫等を通して、ユニバーサルデザインを取り入れたとしての授業の在り方について理解を深め、授業実践を行うことができた。
・学習カードに関して、短時間で記入できる項目の設定や、技能ポイントの解説等を取り入れるなどの工夫をすることで、児童・教師双方にとって、振り返りを効果的に行うこと
ができた。
6.今後の課題
・ユニバーサルデザインの考えを取り入れた体育科の授業実践によって、学級づくりや単元設定などの環境づくりが大切であることがわかった。
・体育科における課題をさらに解決していくとともに、他教科との関連を図りながら、より研究を深めていく必要がある。