第57回全国学校体育研究大会 佐賀大会 視察報告

冨田 宏幸

福島市立福島第一中学校 主幹教諭


第57回全国学校体育研究大会 佐賀大会 視察報告

 

 佐賀大会では、幼稚園が2分科会、小学校が4分科会、中学校が3分科会、高等学校が2分科会、特別支援学校が1分科会、計12の分科会において発表が行われた。

 

【佐賀大学教育学部附属中学校の授業を参観して】

佐賀大学教育学部附属中学校では研究主題を「生活を豊かにするための保健体育科の授業づくり」として研究を推進していた。運動やスポーツを行うことは、体力の維持向上に加え、精神面への効果やコミュニケーションの広がり、さらには社会への参画なども期待されている。運動やスポーツを積極的に実生活や実社会に生かすことで、生活が笑顔や活力に満ちたものにつながると考えられる。保健体育の授業では、生徒自身が単元目標への見通しをもって授業に臨み、主体的に課題解決に取り組むことや仲間との協働を通して自らの考えを広げながら学びを深められるような授業づくりが求められる。そこで、授業における学習過程、課題設定やその解決方法に視点を当て、生涯にわたって生活を豊かにするために運動やスポーツの楽しさや魅力を味わうことのできる授業づくりを目指し、上記の主題を設定している。

 

 保健体育科では新学習指導要領で示されている「主体的・対話的で深い学び」を次のように捉えていた。

 


主体的な学び

対話的な学び

深い学び


生徒たちが見通しを持って粘り強く取り組み、「単元を貫く問い」や「単元のゴールの姿」を求める過程において、自らの学習活動を振り返って次につなげる学び。

仲間との協働(学び合い活動・作戦会議等)を通じて、自らの考えを広げ深い学び。

今まで習得した概念や考え方を活用し、運動への関わり方や課題解決に向けた取り組み方が、より自分やチームに合うものに変化していくこと。そして、それぞれの単元の学びが、他の単元に活かされている。



第57回全国学校体育研究大会 佐賀大会 視察報告

 

研究大会当日は、1学年のマット運動と3学年の体育理論の授業を参観した。

 1学年のマット運動では、10時間配当の6時間目の授業であった。1時間目に「単元のゴールの姿」を確認し、2・3時間目では、今できる技を確認したり、できそうな技への挑戦を主な課題として授業を進めた。4時間目には集団での演技に向け、「マット運動の美しさ」について個人と集団という視点から意見を出し合い、共有化を図っていた。5時間目では共有化を図った視点から班の演技における課題を見つける活動を行い、6時間目を迎えていた。

6時間目の授業のめあては2つあり、1つ目は「練習の仕方や場の設定を工夫しながら、今できる技のできばえを高めたり、できそうな技へ挑戦したりして楽しむ」、2つ目は「今できる技で、滑らかにつながるように技の組み合わせを工夫して、集団での演技づくりを楽しむ」というものであった。

 授業の中では各班にタブレット端末が用意されており、生徒は自分たちの演技をタブレット端末で撮影し、それを見ながらグループで改善点を見つけてはその解決に向けて意見を出し合いながら活動をしていた。タブレット端末などのICT機器は、小学校から授業の中で活用していることもあり、生徒は扱い慣れており、効果的に活用できているように感じた。また、生徒自身も授業の中で積極的に活用したいと考えているということであった。

単元を通して、ゴールの姿を明確に設定し、そこに向かう過程で、自ら課題を見つけ、その課題解決に向けて取り組む中で学びを深めさせるという教師側の意図があった。授業の中では、教師が意図した通り、課題解決に向けて仲間と対話しながら自らの学びを深めていく様子を見ることができた。

 3学年の体育理論では「文化としてのスポーツの意義」についての学習であった。

1学年では保健学習と関連を持たせながら、スポーツを「する」ことによる心身への影響などについて学習し、2学年では学級活動や学校行事などと関連を持たせながら「スポーツと社会性」について学習できるようにカリキュラム・マネジメントを工夫しているということだった。3学年では「する」だけでなく、「みる・支える・知る」も含めたスポーツへの関わり方に着目しながら、将来のスポーツライフについて意見交換をし、自分の考えを深められるようにするとともに、将来と結びつけて考えることができるように、進路決定に近い時期に学習するように年間計画が工夫されていた。

 授業は4時間で計画されており、最後の4時間目の授業を参観した。なお、この時間は中学校での体育理論のまとめの時間になる時間でもあった。4時間目までに、スポーツの文化的意義、オリンピックや国際大会が持つ役割や意義、スポーツが持つ人々を結びつける働きについて学習していた。4時間目は「豊かな人生を送るために、将来、どのようにスポーツと関わり、どのように生活に取り入れるか」について、自己の生活を振り返ったり、他者と意見交換したりして考えを深めることをねらいとしていた。

 授業の中では、前時までの学習内容を踏まえ、自分がスポーツとどのように関わるかについての意見文をまとめ、それをグループで発表し、意見交換が行われた。意見文には、生徒それぞれの立場で、「する」スポーツだけでなく、「みる・支える・知る」という関わり方について具体的に書かれており、1年時からの体育理論や体育分野(実技)の学習の積み上げを実感することができた。意見交換後の生徒の感想には「友達の意見を聞き、自分の視野が広がった」「年をとると激しいスポーツはできなくなるが、さまざまな形でスポーツに取り組むことで生活が豊かになると思う」「スポーツには運動の一面と休養の一面があると思う」などがあった。

学習のまとめでは、これまでの学習を振り返ったり、友達の意見を参考にしながら、自分の考えを再考した。将来豊かな生活を送るために、自分がどうスポーツと関わっていくかについて、自己の適性に応じて深く考えられていた。

 佐賀大学教育学部附属中学校の授業は、新学習指導要領に示されている「主体的・対話的で深い学び」に向けた大変参考になる提案であった。今回参観した授業から得たヒントをもとに、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向け、授業改善を図っていきたい。

 3学年の体育理論では「文化としてのスポーツの意義」についての学習であった。

 1学年では保健学習と関連を持たせながら、スポーツを「する」ことによる心身への影響などについて学習し、2学年では学級活動や学校行事などと関連を持たせながら「スポーツと社会性」について学習できるようにカリキュラム・マネジメントを工夫しているということだった。3学年では「する」だけでなく、「みる・支える・知る」も含めたスポーツへの関わり方に着目しながら、将来のスポーツライフについて意見交換をし、自分の考えを深められるようにするとともに、将来と結びつけて考えることができるように、進路決定に近い時期に学習するように年間計画が工夫されていた。

 授業は4時間で計画されており、最後の4時間目の授業を参観した。なお、この時間は中学校での体育理論のまとめの時間になる時間でもあった。4時間目までに、スポーツの文化的意義、オリンピックや国際大会が持つ役割や意義、スポーツが持つ人々を結びつける働きについて学習していた。4時間目は「豊かな人生を送るために、将来、どのようにスポーツと関わり、どのように生活に取り入れるか」について、自己の生活を振り返ったり、他者と意見交換したりして考えを深めることをねらいとしていた。

 授業の中では、前時までの学習内容を踏まえ、自分がスポーツとどのように関わるかについての意見文をまとめ、それをグループで発表し、意見交換が行われた。意見文には、生徒それぞれの立場で、「する」スポーツだけでなく、「みる・支える・知る」という関わり方について具体的に書かれており、1年時からの体育理論や体育分野(実技)の学習の積み上げを実感することができた。意見交換後の生徒の感想には「友達の意見を聞き、自分の視野が広がった」「年をとると激しいスポーツはできなくなるが、さまざまな形でスポーツに取り組むことで生活が豊かになると思う」「スポーツには運動の一面と休養の一面があると思う」などがあった。

 学習のまとめでは、これまでの学習を振り返ったり、友達の意見を参考にしながら、自分の考えを再考した。将来豊かな生活を送るために、自分がどうスポーツと関わっていくかについて、自己の適性に応じて深く考えられていた。

 

 佐賀大学教育学部附属中学校の授業は、新学習指導要領に示されている「主体的・対話的で深い学び」に向けた大変参考になる提案であった。今回参観した授業から得たヒントをもとに、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向け、授業改善を図っていきたい。


 【そのほかの報告】

 福士 久子 (福島市立笹谷小学校校長)

 朝倉 裕朗 (福島県立二本松工業高等学校 保健体育科教諭)