第57回全国学校体育研究大会 佐賀大会 視察報告

福士 久子

福島市立笹谷小学校 校長


 


【研究の重点】

(1)今持っている力で運動やスポーツを楽しむことからスタートし、「主体的・対話的で深い学び」を実現する授業づくり

    授業デザインの基本的な考え方

    「何ができるようになるか」を明確にし、指導と評価を一体化する(「佐賀モデル」の活用)

    「対話的な学び」を通して、「深い学び」へ誘う

    学習環境の整備

(2)発達の段階に応じて身につけるべき内容を明確にした年間指導計画作成とその内容の定着に向けた単元計画・評価計画の作成

(3)生涯にわたって運動に親しむ資質・能力を育成するポートフォリオ評価の実施

 

【授業の実際】  :佐賀市立勧興小学校3年2組

    研究主題

主体的・対話的に運動やスポーツを楽しもうとする子どもの育成

~「できる」「わかる」「かかわる」を保障した授業づくりを通して~

    単元名

エンジョイ! SUN SUNサーカス(多様な動きをつくる運動)

    授業者

T1 大串郁子 教諭

T2 井崎夢元(外部指導者)  

 

    本時のねらい

用具を操作する動きの行い方を工夫して、動きの質を高めることができるようにする。

 

    児童へのめあての提示

 SUN SUNサーカスに向けて動きをレベルアップしよう」とのめあてを捉え、本時への意欲付をしている。児童も意欲満々である。

 用具を使った動きを工夫する3つのゾーン(ボールゾーン、フープゾーン、新聞棒ゾーン)

    一人・ペアタイムで、自分なりの動きをそれぞれに楽しんでいる

    グループで、みんなでできる動きを考え、かけ声をかけたり、リズムをとったりして、動きを工夫している。

    基本の動きにレベルアップをするための観点を示して、工夫のヒントにしている。

 

 <レベルアップの観点>

一人だけでなく、みんなでできている

 ・動きを合わせている

 ・条件を変えている(条件):姿勢、距離、人数、用具の種類、リズム、方向、回数

 

新聞棒ゾーン

フープゾーン

 「友だちの投げあげた棒をとろう」  「友だちの転がしたフープをくぐる」

                                                               

    「かいわタイム」でもっと動きをよくするための考えを話し合っている。

「かいわタイム」のめあて:自分の考えを一つは伝えよう。

教師から見る視点のヒントを与えられ、自分の動きや友だちの動きをみて、互いにアドバイスをしたり、いいところをほめあったりしている。また、兄弟チームで見合って、いいところを見つけあっている。

 

ボールゾーン

兄弟チームのフープチームが見ている

 兄弟チームで、見合って、動きのよさを見出している

 「一回バウンドさせたボールをとなりの人がとるんだよ」

 

    まとめのグループタイムでは、もっと工夫したい動きを、グループみなで一生懸命に、取り組んでいた。声を掛け合い、何度も挑戦していた。

ボールゾーン

「さっきより、タイミングがあって、ボールを落とさなくなったよ」

「うまくとれたね」

「ボールの高さもあってきたよ」

 

    授業参観を終えて

    研究主題、仮説、研究構想、具体的な取組が、明確に示され、研究内容が伝わった。

    勧興小学校の研究主題をしっかり捉え、この授業が組み立てられていた。先生方の取組の熱心さが素晴らしい。

    体つくりの具体的指導が発達段階に応じて作成され、体育館に掲示されており、学校全体の取組がわかった。

    教材の工夫、先生方のアイデア教材グッズが、随所に見られた。

    児童は、からだほぐしの運動をしながら、自分の身体を動かすよさを感じていた。

    それぞれのグループで、みななかよく動きづくりを楽しんでいた。 

    エンジョイ、サーカスの単元のイメージで、興味をわかせ、いろいろな動きを引き出し、工夫させ、みなで動いてみるという学習展開により、できるようになったことを児童が実感していた。また、もっと高めるには、どうしたらいいか話し合い、実践する過程により「わかった」「できた」が見える学習であった。

    「かいわタイム」等のかかわりを、より深い学びへとつなげる手立てとして重視し、運動への「見方」「考え方」を高めている点がよい。新学習指導要領で掲げている、「見方」「考え方」に通じるものであると思う。

    動きの質を高めるための観点を提示し、工夫し、話し合いによって考えを深めると言う流れで、本時のねらいである、質の高い動きを引き出す手立てとなっていた。

l  質の高い動きを引き出す観点の提示は有効であったと思うが、一人一人の動きが、本当に質の高まりがあったかどうかを、どう見取るかが、課題である。

l  工夫という、思考判断は、評価できるが、技能の向上では、課題が残る。


 そのほかの報告

 冨田 宏幸 (福島市立福島第一中学校 主幹教諭)

 朝倉 裕朗 (福島県立二本松工業高等学校 保健体育科教諭)